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被写界深度 [カメラ]

 こんにちは usk です。もうじき師走ですね。みなさんも忙しくなるのでしょうか。私は12月前半はかなり忙しくなりそうです。忙しい時期を乗り切ったら気の合う仲間たちと海外逃亡を企てています。逃亡中なにか面白いことがあったら、ここでアップしようと思います。

 さて、今回はカメラネタで行こうと思います。カメラネタはしばらくの間、いろいろなキーワードについて的を絞った内容にしようと思います。これから始めようという方にはまず座学で知識を習得して頂こうというのが趣旨です。すでにいくつかネタを用意してあるのですが、中にはよくわからない内容があるかもしれません。しかしそれも興味をお持ちならば障害にはならないでしょう。好きこそものの上手なれです。何度も何度も読み返してくださいね。

 本日のテーマは「被写界深度(Depth of field)」です。おっ、はてなマークが出ましたか?そのくらい知ってるよという声も聞こえてきますね。まぁまぁそう言わずにお付き合いください。概要から理屈まで、(私の知る範囲で)しっかりとご説明いたします。理屈は大切です。この世で起こっているすべての現象には理屈があり、本質を知りたいなら理屈を知らなければならないからです。

 被写界深度 という文字列を見て、単語の意味は大体想像つきますよね。被写体の周りの空間のことを何やら言っているようだと。被写界深度とは、写真のピントが合っているように見える領域のことです。写真用レンズでは、厳密に言うとピントが合っている場所は、一つの平面上にしか存在しません。レンズのフォーカスリングを無限大からまわしてみればわかります。ある1点でピントが合い、またボケていきます。被写体の前後直近しかピントが合っているように見えないとき、被写界深度が浅いといいます。逆に、手前から奥まで合っているように見えるとき、被写界深度が深い、もしくはパンフォーカスといいます。被写体深度焦点深度 という言葉が同義に使われることがありますが、全く違うことを指していますので皆さんは間違えないようにしてください。

 では、ピントが合っているということは、どういうことだと思いますか?めんどくさく言うと、点を被写体としたとき、その点から放たれた光が、フィルム面においてもただ一点にのみ集中するということです。点を撮影したら、点として写るということです。しかし実際のレンズでは、もろもろの収差(*1)(≒小さな不都合と解釈してください)のためそうはなりません。実用上は仮想的な点光源からの光がフィルム面上でもっとも強く収束するような条件をもって、ピントが合っているといいます。ピントが合っている状態から、被写体を前後に動かすとフィルム面上での像はよりぼやけることとなります。これは前述のフォーカスリングを回す話の通りです。
 このとき絞り(*2)の形状が円形であるならば点光源からの光がフィルム面上ではある円形の範囲に散らばります。想像できますね。このように、ピントが合っていてもいなくても点光源からの光がフィルム面上で結ぶ像は円形となり、この円のことを錯乱円と呼びます。こんな言葉を口にしている人を私は見たことがありませんが、知識として頭の片隅にでもおっぽっといてください。錯乱円の大きさはレンズの焦点距離と絞り値に依存し、被写体の距離がピントが合っている場所から離れれば離れるほど大きくなります。

 一般に被写界深度はレンズの焦点距離、絞り、etc...に依存します。具体的に計算することができますが、面倒ですし、そんなもの計算している撮影者はいませんので割愛します。これらの関係は次のようになります。

  被写界深度・焦点距離・絞り の関係
    1. 被写界深度はレンズの 焦点距離が短い (広角)ほど 深く なり、
    2. 絞りを 絞り込む (F値が大きい)ほど 深く なる。

 この性質を利用して、トイカメラレンズつきフィルム などの多くは、ピント合わせのための機構を省略したパンフォーカスの設定で使用できるのです。絞ってあるんですね。そして光量不足を補うために、高感度フィルム(*3)を使用しています。

 しかし、絞り値をあまり大きくすることにも問題があります。ある程度以上絞り込んだ場合、絞りによる 光の回折現象 によっていわゆる 小絞りボケ と呼ばれる現象が発生してしまいます。画像の鮮明さが失われてしまうのです。小サイズフォーマットほどこの傾向は顕著となり、デジタル・フィルムの両方で発生します。大きく引き伸ばした際は顕著に表れてしまうので、ちょっと気になってしまいます。

 また、被写界深度はフィルムフォーマットの影響も受てしまいます。同じ画角で撮影しようとしたとき、焦点距離はフィルムサイズに比例するためです。具体的には、35mmサイズフォーマットに焦点距離50mmのレンズで撮像した写真は、24mm(APSサイズ)フォーマットのカメラで再現しようとすると、焦点距離33mm程度のレンズを使用しなければなりません。そして、同じ画角同じ距離同じ絞り値で撮影したときの焦点深度はフィルムサイズが小さいほど深くなることになります。上述の「被写界深度・焦点距離・絞り の関係」の 1. です。デジタルカメラなど、既存の35ミリフィルムサイズよりも小さな撮像素子を使っていることが多い(フルサイズ機を除く)ので被写界深度が深くなり、ボケを生かした撮影などには不向きであるといわれています。スナップは別として、写真を楽しみたいなら、小サイズフォーマットでなく35mmサイズを使えということでしょうかね。ちなみに、35mm判を最初に作ったのは LEITZ社 です。LEICA のカメラでおなじみですね。現在は LEICA社 ですが、かつては LEITZ という社名でした。LEITZ の CAMERA で LEICA というシリーズ名だったんです。

 ここで、いい資料を貼っておきます。以前どこかから落としてきたのですが、どこからだっかた失念しました。これは絞りの効果を模式的に表したもので、概念が大変わかりやすいです。うだうだと長く書いてしまいましたが、この資料だけでよかったかも…。
深度.jpg

一番上の絵。
これは絞り開放のときの図です。左に被写体(上向きの矢印)があります。中央の楕円がレンズと絞りが合体したものとお考えください。絞りを通った光が、右側のあるところで結像しています。光線の束が急激に収束していますね。結像しているところからちょっと前(後)はもう光線の束がばらけています。これがぼやけている状態です。ある一か所でしかピントが合っているように見えないため、被写界深度浅いということになります。

中段の絵。
これは最大絞りの時の図です。位置関係は上と同じです。この場合は結像している点の前後でも、光線の束が収束しています。ですので、結像した前後でもピントが合っているように見えます(あくまでそう見える)。ですので被写界深度が深い(広い)ということになります。

一番下の絵。
これは。原始的な写真機の図ですね。今回はこちらの説明は割愛します。


 写真はその瞬間を切り取る装置です。どう切り取るかは撮影者に委ねられますが、同じものを撮るにも色々な撮り方があり、結果色々な写真ができあがります。人物を引き立たせよう、そのためには絞りを開けて被写界深度を浅くしよう、光が多く入るからその分シャッタースピードを速くしよう、あっ!シャッタースピードが足りない!!仕方ない、もう一段絞るか…。ということを頭の中でゴニョゴニョ考えながら撮るわけです。あぁ楽しい。ここで "シャッタースピードが足りない!" ということが判明するためには、適正な露出(≒絞りとシャッタースピードの関係)を知っていることが前提になります。この明るさでは、この絞りでこのシャッタースピードだという結論を知っているという意味です。ではそれをどうやって知るのか。それはまた次回。

内容に間違いがあったら教えてくださいね。恥ずかしいのでシレーっと直します…


(*1)収差(しゅうさ):像ができるときに発生する色づきの不自然さや、ボケ、ゆがみのこと。このボケやゆがみは、物体の点が点像にならないことを意味する。
(*2)絞り:レンズ内部の外周から羽状の板が出てきて、連続的にかつ円形に光路を絞る機構。
(*3)高感度フィルム:フィルムがどれだけ光を感じやすいかの指標であるISO(旧ASA)値が高いフィルム。一般的に感度が高いと画質が粗くなる。
タグ:被写界深度
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